ワクワク! クラシック音楽の泉

堅苦しいけど奥深い「クラシック音楽の世界」に新しい出会いを求めて日々活動中。名曲(迷曲)、名演(迷演)、珍曲の発見など、個人的にワクワクしたことを綴っていきたいと思います。

もし、巨万の富を得たら何がしたい? その2 ドリーブ/歌劇「ラクメ」から「鐘の歌」

f:id:HerbertvonHarayan:20200314203529j:plain

「ハイCsの殺戮」

ソプラノ:フローレンス・フォスター・ジェンキンス

ピアノ:コズメ・マクムーン

 

予定していた演奏会が軒並みキャンセル。

無観客配信など、新たな形態で音楽に触れる環境が急に登場したりして

これがどれも見聞きしたいものばかりで時間が足らないなぁ。

と、これまた大きな悩みである。

ただでさえCDやDVDも、まだ聴いていないものが積みあがっている。

 

今はこれらを整理して聴いてみるチャンス、でもある。

ということで早速実施してみた。

 

そこで発掘したのがこのディスク。

輸入盤だがCDにちょっとした、

本当にちょっとした日本語解説がついていて

記載ある邦題は「ハイC’sの殺戮」

f:id:HerbertvonHarayan:20200317220441j:plain

殺戮!!

 

すごいタイトルである。

 

「C」は「ド」を表す。

「ハイC’s」は高い「ド」ということ。

とてもとても高い音があなたを殺してしまう、かもよ。

ということか。 


Lakmé: "Bell Song"

 

いかがでしたか?

 

ちゃんとしたレコード会社が「有料で売っている」CDの音声です。

ちゃんとお金払いました。

 歌うのは

フローレンス・フォスター・ジェンキンス

という女性。

もちろんプロの歌手ではない。

 

莫大な遺産を親から引き継いだ彼女

「得意の歌」のレコーディングを行いSP盤を作成。

お金があればレコードも作れる。

あくまでもプライベート盤だったが、後に商業用として発売されベストセラーになったらしい。

 

久しぶりに、CDで彼女の「洗礼」を受けたのだが

彼女をモデルとした映画「マダム・フローレンス!夢見る二人」のことを思い出した。


『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』予告編

2016年公開のこの映画に関しては、なぜか引っかかってこなくて、見たことがなかった。

彼女を演じるのは、なんと「メリル・ストリープ」 

映画では指揮者トスカニーニも登場。

(金持ちだった彼女に支援を、ということで登場する)

彼が指揮するドリーブの歌劇「ラクメ」中の超難曲「鐘の歌」を聴き

自分も歌ってみたいと言い出す。

  

メトロポリタン歌劇場の副指揮者の指導の下、トレーニングを積む。

「素晴らしい!!」???

と、ヒュー・グラント演じるご主人とともにおだてられながら。

 

ようやく映画も見たのだが、映画の音声と実際に録音したCDの音声が違うことがわかる。

もちろん音程ははずれるが、なんか聴きやすい、のである。

その理由はエンドロールで分かるのだが、使用楽曲欄になんとメリル・ストリープの名前がクレジットされている。

彼女自身も相当な「トレーニング」をしたのだろう。

でも意識して「外す」というのはかなり高度なテクニックなはず。

通常の音程で歌えないと、外すのは難しいので、まずは正当に歌えるように

相当なトレーニングをしたのだろう。

 

そういえば映画「マンマ・ミーア!」でも素晴らしい歌声を披露していたっけ。

 

最終的には、あこがれのカーネギー・ホールを借り、リサイタルをしてしまう。

ただ、目的は戦争帰還兵のための慈善公演ということで。

 

今まで「大金持ちの道楽」で好き勝手なことやっちゃって!

と、思っていたのだが、映画を見てなんだか意識が変わってしまった。

 

そして、その映画でわかったのだが

彼女自身、音楽的才能が子供の頃からあり、天才児として8歳でピアノ・リサイタル、そしてホワイトハウスでも披露しているのである。

 

でも病気、そして手に負ったけがのため音楽家への道をあきらめることに。

病気というのは前の夫に移された梅毒だという。

移ってから50年も生きているというのは奇跡的なことで、死の影を背負いながら人生を過ごしていた。

その眠っていた夢がふつふつと湧いてきた、ということなのだろう。

 

映画は脚色も幾分あるだろう。

(例えば歌は、若い時から歌っていたようであり、年を取ってからではないようだ。)

でも、彼女の生涯を知る上では大変参考になった

 

もう一度CDを聴いてみる。

やはり「金持ちの道楽」

ということではない、まったく違う感覚になっていた。

 

モーツァルトの「魔笛」の「夜の女王のアリア」は、これも超難曲だが

あの超高音も、実は音程としては到達しているのである。

これだけでもすごいことだと思うし、やはり音楽的センスがゼロということではないのだろう。

じっくりと聴いた。

 

彼女はカーネギー・ホールでリサイタルを開いた翌月に亡くなってしまう。

 

映画では、ご主人役ヒュー・グラントも良いが、ピアニストのコズメ・マクムーン役を演じたサイモン・ヘルバーグが大好演。

ピアノも彼が弾いている。

 

 

※CD中の歌劇「ラクメ」の「鐘の歌」。有名なのはこの音声。リリー・ポンスが歌うもの。

 本当に難しいと思う。


Lily Pons sings "The Bell Song" from Lakme