ワクワク! クラシック音楽の泉

堅苦しいけど奥深い「クラシック音楽の世界」に新しい出会いを求めて日々活動中。名曲(迷曲)、名演(迷演)、珍曲の発見など、個人的にワクワクしたことを綴っていきたいと思います。

自分が生きてきた各年代を曲で表すと? アルカン/グランド・ソナタ「生涯の4つの年代」

f:id:HerbertvonHarayan:20200311210549j:plain

アルカン/グランド・ソナタ op.33 「生涯4つの年代」

演奏:ロナルド・スミス

録音:1973年12月10,11日 アビー・ロード・スタジオ

 

アルカンという作曲家は1813年に生まれた。

ショパン(1810年生まれ)やリスト(1811年生まれ)と同時代に活躍した人。

ショパンやリストと同様、作曲家でありピアニストであった。

そして、ショパンやリストと同様、サロンでは人気者だったらしい。

 

けれど、ショパンやリストのように有名ではない。

私も名前は聞いたことがはあるが、どんな作品があるのか全く知らなかったし、聴いたこともなかった。

つい最近まで。

 

クラシックの珍しい作品をいろいろ漁っている中で、最近引っかかってきたのがアルカンの作品で

「生涯の4つの年代」

という仰々しいタイトルが付いたもの。

しかも、その仰々しいタイトルの前には

「グランド・ソナタ」となっている。

 

「グランド」な「ソナタ」である。

 

これはショパンにもリストにもない。

その名のとおり、40分ほどある作品。

 

タイトルの「生涯の4つの年代」が意味するのは

「20代」(第1楽章)、「30代」(第2楽章)、「40代」(第3楽章)、「50代」(第4楽章)

という構成によるもの。

聴いたことはないが、各楽章がどのような雰囲気の曲なのか

なんとなく予想ができそう。

 

20代は若々しく、キビキビしていて、ちょっとやんちゃな雰囲気もあって。

そして

50代は、かなりおおらかな、落ち着いた音楽。

 

そうなのだろうか。

今や50代の私、が聴いてみる。

 

第1楽章「20代(非常に早く、決然と)」

いきなり飛び回るような音階が並ぶ。これは20代ではなく、もっと若い子供。

子供が駆けずり回っているような風景が目に浮かんだ。

まあ、なんとも落ち着きがない20代。

でも、考えると自分もそんな状態だったのかも、と今更ながら思う。

 

では「20代」を、ここで。結構な超絶技巧が必要である。


FRANCESCO LIBETTA C-V Alkan 20 ans (20 years) Grande SonataOp. 33-Quatre Ages

 

第2楽章「30代、ファウスト風(かなり早く、悪魔的に)」

「悪魔的に」・・・

30代はゲーテの「ファウスト」のように「悪魔と契約してしまう」ような年代なのか。

 

体力もあり、仕事も一番バリバリできた年代。

いろいろなことがわかり始めてきて、世渡りの術もわかったりして

怖いものが少なくなった。

その分、勢い余ってやらかしてしまったり、いろいろな誘惑に乗りそうになったり

というのもある。

曲の終盤は落ち着き、堂々とした終わり方。

いろいろな悪魔、誘惑に打ち勝っていく雰囲気。

なるほど、この辺りはわかる気がする。

  

第3楽章「40代、幸せな家庭(ゆっくりと。優しさと静けさをもって、滑らかに)」

幸せな家庭。社会的にも安定をみせ、子供も成長し家庭も円満。

音楽も平和な、とても崇高な宗教曲にも聞こえる。

 

いやぁ、でも現実はなかなか大変。

仕事もキツイし、家庭もいろいろ混乱が生じて。。。

 

第4楽章「50代、縛られたプロメテウス(極度にゆっくりと)」

なんだかもう、死んじゃうような重々しい雰囲気。

「人間50年~」

と信長が歌い舞ったことを思い出す。

もう、とてもご長寿で、死が直面していてもおかしくない年代。

今や50代の私。

まだまだ、そんなことには直面したくない。

 

アルカン自身は75歳でお亡くなりになっている。 

そして、この作品が出版されたのは34歳。

まだ40代、50代は未経験である。

なのに、40代、50代を音楽で表しているとは何たること。

しかも、アルカンは生涯独身を通した。

子供のいる幸せな家庭、は実体験ではない。

いろいろ想像したり、周囲のある人物をイメージして作曲したのだろう。

おそらく。

 

 

※CDの演奏者「ロナルド・スミス」はアルカンの研究をした人で「アルカン協会」の会長さんも務めた。