サンタに届けてもらいたいプレゼントは? フライ/クリスマス交響曲「サンタクロース」
フライ/クリスマス交響曲「サンタクロース」
指揮:トニー・ロウ
演奏:ロイヤル・スコティシュ管弦楽団
録音:1999年8月 グラスゴー・ヘンリー・ウッド・ホール
今年も、もう終わってしまう。
なんという早さ。
楽しいことは早く終わってしまうという。
例えば、気の合う仲間と食事しているとき。
「えっ、もうこんな時間?まだ、全然話し足らないでしょ!」。
反対にツマラナイ話を聞いているとき。
「えっ、まだこんだけしか時間たってないの?この先長いなぁ」。
ということは、この1年、とっても楽しいことばかりだったのか!
というと全くそういうことではなくて、ツマラナク、辛いこともいっぱい、いっぱいあったが。
歳を取ると早く時間も経過してしまうとか言うので、そのせいなのか。
ということは毎年毎年、時間の経過があっという間になってしまって。。。
棺桶が急速にこちらに向かってくる気がする!
新しい年を迎える前にはクリスマスという大イベントがある。
先回も「ディズニー・リゾートが一番華やかな季節」と書いたけど、街の中もがとても華やか。店の中もクリスマス・ミュージックのBGMばかり。
「サンタさん、いい子にしているからプレゼントはこれをくださいね」
なんて歳ではないけれど、やはり少しは気分がワクワクしてしまう。
クラシック音楽でも「クリスマス・オラトリオ」という作品をバッハは作っているが、
「ジャケ買い」ならぬ「タイトル買い」をしてしまったのがこのディスク。
なんと「サンタクロース」という副題である。
交響曲のタイトルとして「運命」「悲劇的」とかにくらべて、とてもワクワクするではありませんか。
きっと鈴の音がシャンシャンと鳴り響く様子や、サンタさんが「ホーッ、ホッ、ホッ」と笑うさまが音楽として盛り込まれているのだろう。
でもなんでサンタさんは「ホーッ、ホッ、ホッ」
(※表記方は、あくまで個人的印象によるものです)
と変わった笑い方をするのだろうか。ちょっと不気味で、子供は怖くないだろうか。
作曲したのはウィリアム・ヘンリー・フライという人。聞いたことがない名前だが、アメリカ生まれのアメリカ人として(アメリカは移民の国なのでアメリカ生まれの人として)初めてグランド・オペラを作曲した人らしい。
交響曲となっているが単一楽章なので交響詩というのがふさわしい。ほとんど情報がないので英文解説書を参考に、でもかなり主観を盛り込んだうえで聴いてみる。
華やかなファンファーレで幕が開けるが、これは救世主の誕生を表している。クリスマス・イブのパーティが開かれ、ダンスに興じている楽しい雰囲気が描かれる。この辺りはアメリカンな雰囲気。
パーティが終わったのであろう、静かになったところで弦全体が奇妙な音でグリッサンドを激しくかける。とても怪しい雰囲気に包まれる。何が起こるのか。これは吹雪を表しているようだ。
遠くで教会の鐘の音が鳴り響き。深夜、日付けが変わる。
「シャンシャン」という鈴の音。
とうとうやってきました、サンタクロース。
そりで登場したとわかるのはムチ打つ音が入っているから。それも結構頻繁に強く。トナカイがかわいそうなくらいである。
音楽が静かになるのだが、ここで煙突を下りて靴下にプレゼントが入ることを表しているらしい(解説書によると)。
それにしてもあっという間だ。
再び鈴の音がしてサンタクロースが帰る様子。姿が見えなくなると有名なクリスマス・キャロル「天には栄え」の旋律が流れ、夜明けの様子が描かれる。
最後は再び「天には栄え」が盛大に鳴り響き幕を閉じる。
という内容である。
「天には栄え」。
これはメンデルスゾーンが作曲した作品。カンタータ「祝典歌」の第2曲が原曲である。「グーテンベルク・カンタータ」とも呼ばれ、1840年にグーテンベルクが発明した印刷技術の400周年として作曲。同時に作曲されたものに交響曲第2番「讃歌」がある。
ユダヤ人であったメンデルスゾーン一家は迫害を受けることもあり、キリスト教に改宗。バッハ作品を次々と世に広めていった立役者でもあり、自らもオラトリオ「エリア」などを残し、38歳で若くして没してしまったが大きな足跡をのこしている。
もし、今、サンタクロースにプレゼントをもらえるとしたら、何がいいだろう。
子供の時に「あれが欲しいな」とワクワクしながら考えていたようなものとは程遠いものばかりなので、書くのはやめておこう。
※このディスクにはフライの4つの作品が収録されている。「ナイアガラ交響曲」はなんとティンパニが11台も登場する過激な作品。生で聴いてみたい。どこかのオーケストラで演奏してくれないだろうか。