おいらがいつか死んだら・・ グルダ/ゴロヴィンの森の物語
録音:1999年 パラダイス・スタジオ(ヴァイセンバッハ、オーストリア)
先に記載の「ウィーンの三羽烏」のひとり。
フリードリヒ・グルダ。
ああ、「三羽烏」の意、まだ自分なりに解決していない・・
クラシックに片足を突っ込んだばかりのころ、グルダがソロで弾き、アバドがウィーン・フィルを振ったモーツァルトのピアノ協奏曲集を繰り返し聴いていた。
とても模範的な演奏。
繰り返し聞いても「ああ、いいなぁ」と。
後日、グルダは一風変わったヘンテコなピアニストであることを知ってからは、避けるようになっていた。
変わった服装で「パラダイス・バンド」とかいう楽団を作って、クラシックの範疇をはずれた音楽を演奏をしていたグルダ。
学校に通っていた時は校則は絶対に守るべきもの。靴下は白と決まっていれば白。ちょっとしたラインが入っていてもダメなのだ。
そんな考え方をしていた子供時代を過ごしてきた自分は「こうあるべき」という枠を超えたものは、音楽においても認められないという思いが、今から思えば強くあったのである。
グルダは2000年1月27日、ちょうどモーツァルトの命日にこの世を去った。
そして、自分自身も成長とともに変化があり「ルールはすべて従うもの」なんていう考え方からも変わっていた。
今聴けばとてもいいし、面白いとも思うグルダ。
モーツァルトのソナタをカセットテープに録音した音源が大量に発掘されてCD化されたり、再び脚光を浴びることになってさらに聴く機会が増えた。
このCDも彼のプライベート録音の音源だが、なんと巨匠自らがCD化して地元のレコード屋に売り込んでいたのだとか。
こういう点も変わっていたところというか、可愛らしいというか。
「ゴロヴィンの森の物語」はウィーンゆかりの作曲家、ヨハン・シュトラウスにベートーヴェン、シューベルトのフレーズをアレンジして仕立てた自作曲。
ジャズ風な部分ももちろん登場。そして歌詞がちょっとついていてグルダ本人の歌声も聴くことができる。
「おいらがいつか死んだら・・」
と歌って録音したのが死の前年のこと。
そう思うとなんだか悲しいのだけど、ニューヨークでジャズに傾倒して「クラシックはもうやらない」と言ってヘンテコな方向へ行ったとしても、やはりウィーンをとてもとても愛していたグルダの一面がすごくわかるのである。
CDだけでなく映像もYouTubeにはたくさんあがっていて驚く。
「皇帝」を弾き振りをしているが、なんだか近所のピアノが趣味のオジサンが酔った勢いで登場した、みたいな感じ。
でも、凄く楽しそう。
Friedrich Gulda: Beethoven - Piano Concerto No. 5 in E flat major Op. 73
こちらはアバド指揮、ヨーロッパ室内管。ウィーン・フィルとの名盤を彷彿とさせる。
Friedrich Gulda & Claudio Abbado - Mozart: Piano Concerto K488