ワクワク! クラシック音楽の泉

堅苦しいけど奥深い「クラシック音楽の世界」に新しい出会いを求めて日々活動中。名曲(迷曲)、名演(迷演)、珍曲の発見など、個人的にワクワクしたことを綴っていきたいと思います。

蒸気機関車(SL)豆知識 オネゲル/交響的楽章 第1番「パシフィック231」

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オネゲル作品集

指揮:ジャン・フルネ

演奏:オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団

録音:1993年5月 ヒルヴェルスム・ミュージック・センター(オランダ)

 

ゴルゴ13」「乃木坂46」。

それぞれ数字が付いた名称。

その数字にどんな意味があるのか、よくわからないままであったが、この機会に調べてみて納得。

 

オネゲルが作った「パシフィック231」の「231」にも、もちろん意味がある。

なんと蒸気機関車(SL)のことなのだが、普通の鉄ちゃんに「パシフィック231ってカッコイイよね?」といきなり尋ねてもきっとわからないはずである。

 

ここからしばらく鉄の話になるが。

まず「パシフィック」とは様々あるSLのひとつの型のことで

「パシフィック型のSL」

ということを表す。

 

他に「ハドソン型」や「ミカド型」などの名称があり、このような呼び方が使われるのは主にアメリカである。

そして、そのそれぞれの型は何をもって区別されるかというと、機関車の車輪の並び方で名称が分けられるのである。

 

日本でも過去たくさんの型のSLが活躍していたが、その区別もやはり車輪だが

その中でも動力を伝えるための大きな車輪「動輪」の数でアルファベットがあてがわれて付けられた。

動輪が1個なら「A」、2個なら「B」という具合。

日本で一番有名なSLはD51型、通称「デゴイチ」だと思うが、「D」=「動輪が4つ」あるSLの形ですよ、ということを意味する。

 

それではアメリカにおける「パシフィック型」はどういうことか?

これは、日本よりもうちょっと複雑で、車輪配列が「2、3、1」になっているSLですよ、ということを意味する。

「パシフィック型」と「231」は同じ意味、ということになる。

 

最初の2は「先輪」という、前方についている小さめの車輪の数である。

「動輪」の数は次の3にあたり、最後の1は「従輪」という後方につく小さい車輪の数。

日本式でいうと動輪3個なのでC型のSLのひとつということになる。

 

日本のC型のなかでもパシフィック型にあたる車輪配列のものには名機が多くあり、C51とかC57は急行列車を牽引していた花形のSL。

今でも京都梅小路鉄道博物館でお目にかかれる。

C57は現役で「SLやまぐち号」の先頭にたって活躍中である。

 

C57は「貴婦人」とも呼ばれる優雅なスタイルが人気だが、同じパシフィック型の機関車を音楽で表現したというこの曲は対照的に、なんとも無骨でギクシャクと重々しく動き始め、とにかくやみくもに飛ばしていくような印象を受ける。

もちろん、SLの走りをうまく表現されている。SL自体、重い黒い鉄の塊が蒸気をあげ、大きな音を轟かせながら動く物体。そのまま考えれば恐ろしさも感じることで、明治初期に初めて走り出した陸蒸気に対して(パシフィック型に比べれば、はるかに小さなサイズだが)人々が恐ろしさを感じた感覚に近いのかもしれない。

 

かなり鉄分が濃い内容になってしまった。

 

オネゲル

この作品作曲後、彼が書いた「私は作曲家である」(吉田秀和:訳)という本を図書館でたまたま見つけたので読んでみた。

そこにはこの曲に関する衝撃の事実が書かれていた。

 

「わたしは作曲をおえてから、あの題を書きつけた」

と。

ということは、何をイメージして作曲してたのだろうか?

気になる。

 

 

※CDジャケットにSLが載っているが、残念ながらパシフィック型ではない。