「チェロの妖精」が「チェロのリスト」の作品を弾く オッフェンバック/チェロ協奏曲
オッフェンバック/チェロ協奏曲 ト長調 「軍隊風」(クレマン版)
チェロ:オーフラ・ハーノイ
指揮:アントニオ・デ・アルメイダ
録音:1995年1月16、17日 エセックス・ホール
2019年はオッフェンバック生誕200周年ということで、恒例により普段以上に作品が演奏される機会があった。喜歌劇「天国と地獄」、中でもフレンチカンカンの踊りの曲として有名であるが、それ以外というとあまり多くは出てこない。あの方眼鏡をかけた肖像写真は特徴あるお姿が印象的で子供のころからベートーヴェンやモーツァルトと並んで記憶にあった。音楽室には張っていなかったのは間違いがないが、どこで出会ったのだろうか。
オッフェンバック、実はチェロの名手であって演奏だけでなく作品も多く残しているということを知り、チェロ協奏曲を作っているのがわかったのでディスクを手に入れて聴いてみた。
曲よりまず、写真のCDジャケットを見ていただきたい。
「ベルばらのオスカル」かと見まがうような男装の麗人がチェロを抱える。オーフラ・ハーノイ。美貌のチェリスト。「チェロの妖精」という風に呼ばれていたと記憶する。そういえば最近はあまり名前を聴かないのだが。正直、ジャケ買いしてしまった。この曲自体のCD数が非常に少ないので、これしかなかった、という言い方もできるが、著名なおじさんチェリストのCDと複数あったとしても、こちらを選んでいたはず。
副題が「軍隊風」なのでこのようなお姿なのであろう。これはチェロの「妖精」であってもガンガンチェロを弾きまくるような演奏、期待大である。
第1楽章は静かにティンパニから始まる。軍隊が遠くを行進している、それが徐々に近づいてくるというような雰囲気。さすが「軍隊風」。チェロもなかなかパワフルに弾かれる。相当なテクニックを駆使するであろうフレーズも多く登場。「チェロのリスト」とも呼ばれたというオッフェンバック。チェロの指使いで女性を失神させたという話は聞こえては来ないが。
「軍隊風」という割には、意外にも叙情的なメロディーが多く登場。特に第2楽章は聴きごたえがある美しさ。
実はこの曲。初演時は第1楽章のみが演奏。総譜もその第1楽章しか存在せず第2、第3楽章がスケッチくらいしか残っていない。ということでクレマンという人が補筆して完成させた。オーフラ・ハーノイはこの3楽章版初演者でもある。
その後、第2楽章が発見され、2005年にケック版というのができた。こんな過程もあったからだろう、チェロ協奏曲が、ようやく日本初演されたのはつい最近の10月。オッフェンバック生誕記念年であったからだろう。実際に聴きに行ったがこのCDとは第2、第3楽章が全く異なる曲になっていた。CDのクレマン版は約30分、ケック版は45分という大曲になっていた。ケック版の第3楽章がすごく面白くて、聴きごたえが増していた。オッフェンバック自体、非常に素敵な楽しい元気になるメロディーを生み出す作曲家。今後もっと演奏される機会が増えることを期待したい。
これも最近知ったことだが、「オッフェンバック」という名前、これはペンネームで本名は「ヤーコプ・レヴィ・エーベルスト」。フランスで活躍したがもとはドイツ生まれの人である。
オーフラ・ハーノイは、肩の故障をしていて15年間後の2018年復帰。新しいCDもリリースした。よかったよかった。でも、こちらのジャケットは後ろ姿のみ。すごく気になる。
https://tower.jp/item/4952235/
そして10月に日本初演されたケック版はこちら。
https://tower.jp/item/4841531/