ワクワク! クラシック音楽の泉

堅苦しいけど奥深い「クラシック音楽の世界」に新しい出会いを求めて日々活動中。名曲(迷曲)、名演(迷演)、珍曲の発見など、個人的にワクワクしたことを綴っていきたいと思います。

久しぶりの鉛筆と、ヘンデル/水上の音楽

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先日、選挙へ行ってきたときのこと。

 

これからの世の中を左右する選挙の投票会場は

やはり、何か厳かな雰囲気で、すでに何度も経験しているとはいえ

今だに緊張を感じるのである。

 

沢山の係員に、終始行動を見張られているようにも思うし。

悪いことはしていないけど。

  

会場は小学校の体育館だったが、入り口のほうからなにやらラッパの音がなっているのが聴こえてきた。

 

ああ、これは

ヘンデルの「水上の音楽」の中の1曲

「アラ・ホーンパイプ」だ。

 

「水上の音楽」の中で一番有名なものだろう。

 

トランペットが華やかに、高らかに鳴り響き、とても華やかなものだ。

 

緊張を感じるはずの投票会場。

 

いきなり意外な展開で、何かふっと心が軽くなるのを感じた。

 

そういえば、

いままで投票した際、投票会場に音楽は鳴っていたのだろうか?

思い返してみても記憶がない。

流れていたとしても気が付かなかったのかもしれないし、

流れていなかったのかもしれない。

 

小さなラジカセから結構大きな音で体育館に響くヘンデル

 

ところで

投票会場のBGMはどのように選ばれているのだろう。

ということが頭によぎる。

 

『投票会場には選挙管理委員会が指定する楽曲しか流してはならない。

その楽曲は「ヘンデルの水上の音楽」とする』

 

まさか、そんなことは無いだろうけど。

 

でも、人の気分を変化させる効果も持つ音楽。

それこそ、その選曲によっては会場の雰囲気もかわり、人間の心理状態を変化させ

票の行方も左右させるかもしれない。

 

もし、ベートーヴェンの「運命」なら

 

会場に入った途端

「自分が決めた、この候補者でいいのか?

それとも?

この一票で世の中の運命が決まるのだ。

本当に良いのか?

いや、何を迷っているのか?」

 

きっと、投票用紙に書く文字が震えだすであろう。

 

もし、ヴェルディの「レクイエム」から「怒りの日」なら

 会場の雰囲気は「運命」以上に大変なことに。

 

「審判を仰ぐ」という意味では、これは候補者側の心理のほうを表すだろうか?

  

やはり、一番ニュートラルに、何にも影響されず、自分の意志を表す必要がある。

 

となると

ジョン・ケージ4分33秒」か。

 

4分33秒の間

演奏者は1音も鳴らさずに

終える曲。

 

静かな会場に聞こえてくる

窓の外の鳥の声

人が行きかう足音

鉛筆を走らせる音。。。

 

自然に、耳に入ってくる音、聴こえる音が音楽。

 

そういえば

鉛筆を使うなんて、今の私にとっては投票の時だけかもしれない。

 

芯が紙に擦り付けられる音のバックにヘンデルが響いている。

 

久々に全曲を聴いてみた。

指揮:ニコラウス・アーノンクール

演奏:ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

録音:1978年2月 ウィーン

※投票会場に流れていたのは、この演奏とは違うものであった。

アーノンクールの刺激的な音楽ではなかったから。