ワクワク! クラシック音楽の泉

堅苦しいけど奥深い「クラシック音楽の世界」に新しい出会いを求めて日々活動中。名曲(迷曲)、名演(迷演)、珍曲の発見など、個人的にワクワクしたことを綴っていきたいと思います。

喜歌劇の父が作った鎮魂曲 スッペ/レクイエム

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 スッペ/レクイエム ニ短調

指揮:ゲルド・シャラー

演奏:フィルハーモニー・フェスティバ

録音:2012年7月(ライブ録音)

 

フランツ・フォン・スッペ

 

正式な名前は

フランチェスコ・エゼキエーレ・エルメネジルド・スッペ=デメッリ

 

長い・・・

 

オペレッタ(喜歌劇)の父」とも呼ばれていて

喜歌劇「軽騎兵」は序曲が有名で、耳にする機会も多い。

今年(2020年)のウィーン・フィルニューイヤーコンサートでも

演奏された。

 

ただ、序曲以外の全曲が演奏される機会は、ほとんど無い、と言ってもよさそう。

その他、スッペの作品といって思い浮かぶものは?

「詩人と農夫」

これも喜歌劇だが、やはり序曲が有名なくらいで、あとは思い浮かぶものはない。

 

「ボッカチオ」という喜歌劇もあるのだが、ここに登場するアリア

「恋は優し、野辺の花よ」

は、昔、田谷力蔵がテレビでも歌っていて耳にしたことも多いかもしれない。

 

「ベアトリ姐ちゃん」

なんていう、凄い名前の歌もエノケンの歌唱で聴いたことがあるが

これも「ボッカチオ」に関係があって

「ボッカチオ」に登場する人物「ベアトリーチェ」のことを指す。

しかも曲自体は実際に登場するものである。

 

いずれも浅草オペラに関わる人物。

浅草オペラではオペレッタが多く上演されていた。

「椿姫」や「カルメン」などドラマチックな内容のものも含めて。

 

まだ西洋音楽が身近ではなかった大正時代に

身近な存在となるために日本語で上演し、人気を集め、大衆化する役割を担った。

おそらく日本語訳もかなり大変なものであっただろう。

音楽と合わせることは。

だから、ちょっとひねくれさせて、面白く変えてみたりしたセンスは面白いと思う。

 

脱線した話を戻そう。

 

スッペの作品

オペレッタ以外の作品が表に出てくることがない。

 

実は「オペレッタ」しか書いていないのではないか?

 

昨年(2019年)はスッペの生誕200周年の記念の年だった。

さすがに記念の年だから

演奏会でも取り上げられる機会があり、CDも彼の作品が多く出た・・・

 

というわけでもなかったように感じる。

 

でも、記念の年だから、いろいろ情報は発信されていて

そのなかに

「レクイエムがある」

という情報が引っかかってきた。

 

 

オペレッタとレクイエム

対極的な分野、と言ってもいいだろう。

 

もしかして「オペレッタの父」が書いたのだから

前代未聞の楽しいレクイエムだったりして。

 という妄想が広がって、とても気になってしまった。

 

レクイエム、といえば、

モーツァルト

がまず思い浮かぶし、そして次は

ヴェルディフォーレだろうか?

 

楽しいレクイエム、をちょっと期待しながら聴いてみた。

 

さすがに、楽しく、ワクワクする、というようなものではなかった。

ヴェルディに近い、という印象でだった。

 

劇的で、結構派手な音作りをしている点。

ヴェルディは全編「まるでオペラだ」というようなレクイエムを書いたが

スッペも、所々、オペラ的な要素が顔をのぞかせているような気がする。

オペラ、オペレッタ作曲家の共通点、ということだろうか?

  

個人的な聴きどころは

葬送行進曲を思わせる静かな部分から激しい2重フーガになる冒頭。

短いが激しく劇的なディエス・イレ。

美しいメロディがちりばめられるアニュス・デイ

 

スッペがレクイエムを書くきっかけは友人でパトロンであったボルコニーの死

 

ローマ教皇ピウス9世の出席のもと初演された。

教皇が出席するほどだから、正当な宗教作品として上演されたということ。

 

スッペはもともと教会で音楽を学んていた。

故に宗教音楽とはごく近い存在であり、基礎であった。

レクイエムは34歳の時に作曲なので

オペレッタを多く生み出す前の作品なので

オペレッタの感覚ではない、宗教作品として作ったはず(当然)。

ヴェルディのレクイエムはこの20年後にできるので、

もしかしたらヴェルディは、この作品を耳にしている?かもしれない。

 

レクイエムは宗教音楽ではあるが

モーツァルトヴェルディは純粋な音楽としても聴きどころが多い。

スッペもぜひ、生でも聴いてみたい作品だ。