ワクワク! クラシック音楽の泉

堅苦しいけど奥深い「クラシック音楽の世界」に新しい出会いを求めて日々活動中。名曲(迷曲)、名演(迷演)、珍曲の発見など、個人的にワクワクしたことを綴っていきたいと思います。

指揮者が倒れてしまったら? チャイコフスキー/交響曲第4番

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「指揮棒が刺さって死んだ人がいる」

の答えは

ジャン=バティスト・リュリ

 

というのは先にも書いたことだが

(まだお読みでなければ、以下ご参照いただければ) 

herbertvonharayan.hatenablog.com

 

それを書いてから、思い出したことがある。

 

「指揮棒が刺さって、死にはしなかったが、怪我をした人がいる」

 

それも本番中のことである。

 

その話はリュリに比べたら、まだごく最近の話

21世紀に入ってからのことである。

ということは、もう、あの床をドンドンたたきつける大きな指揮棒ではなく

今見る形態の指揮棒、である。

 

2004年10月23日

場所は東京渋谷のNHKホール。

 

その日、NHK交響楽団を指揮していたのは、ピアニストとしても有名な

ウラディーミル・アシュケナージ

 

アシュケナージはこの年度シーズンよりNHK交響楽団音楽監督に就任。

その記念の意味もある公演であった。

 

プログラム前半の曲は、チャイコフスキー交響曲第3番「ポーランド」である。

チャイコフスキー交響曲では超マイナーな曲で、

これが演奏されるのも、また貴重な機会。

 

この曲の指揮中、アシュケナージは自分の手に指揮棒を刺してしまったのである。

彼は指揮棒を右手に持つので左の手のひらに

ブスリ

ということだったらしい。

それも相当深く刺してしまった、とのことである。

アシュケナージは前半を何とか振り終え、そのまま病院に行って治療を受けたとのこと。

 

私は残念ながらこの公演には行っていないので、伝え聞いた情報のみであるのをご了承いただきたい。

 

いつだったか、後半のプログラムであるチャイコフスキー交響曲第4番を

指揮者なしで演奏していた模様がテレビ放送されたのを見たことがある。

 

NHK交響楽団の定期公演は2日間同じプログラムで開催され、初日はテレビカメラが入る。

刺さってしまった公演は初日なのでテレビカメラが入っていたということになる。

 

前半、つまりブスリとやってしまった演奏が放送されたかどうかは、私にはわからないのだが。

 

残る2日目の公演はどうなった?

 

治療を終えたアシュケナージが無事に振って終えた。

 

それにしても、ピアニストとしても大活躍だった彼なので

手の怪我はピアニスト人生にも大きな影響があると思われたが

その後も演奏し、録音もしているのでこれは大きな影響はなかった

ということだろう。

 

ところで

後半のチャイコフスキー交響曲第4番。

指揮者なしで演奏していたのをテレビで見た、ということについてだが

 

「もし指揮者が倒れてしまった時、その代わりをするのは、ホニャララ」

 

というムダ知識

「トリビ●の種」が、ここに生まれたことになる。

 

その代わりをしたのは、当時コンサートマスターだった堀さん。

コンマス席でテンポをとりながら演奏していた。

 

指揮者がいないオーケストラも世の中にはあるのだが

チャイコフスキー交響曲は指揮者無しだと

編成も大きいのでかなり大変な曲だと思う。

それを指揮者なしでやるという判断

そして、やってのけたというのは相当な力量を持っていないとできないことだと思う。

 

それを思い出しながら、このCDを聴いた。

もちろん、このCDの演奏はアシュケナージが指揮をしている。

ちなみにこれが録音されたのは、その出来事が起こる2日前のこと。

 

まさか、そんなことが起こるとは夢にも思っていなかったであろう。

 

【ワクワク!CD】

チャイコフスキー交響曲第4番 ヘ短調 op.36

指揮:ウラディーミル・アシュケナージ

演奏:NHK交響楽団

録音:2004年10月21日 すみだトリフォニーホール(セッション録音)

 

残念ながら、アシュケナージは音楽活動から引退することを、今年発表している。

お疲れさまでした。