バーンスタイン指揮
1979年7月2・3日 東京文化会館でのライブ録音
私はライブ録音されたものが好きである。
そもそも、ライブ録音というものに興味を持ったきっかけがこのディスクの演奏。
当時はレコードだったが。
友人のS君
彼は私を「クラシック音楽」というディープな世界に引きずり込んだヤツなのだが
「これ、凄いから」と持っていたレコード。
高校の昼休み時間、音楽室で聴くことに。
まだクラシック音楽ビギナーだった私。
理解することが出来ないまま聴いたのだが、あの最終楽章の高揚感に心をぐっと掴まれてしまった。
昼休みなので全曲聴く時間はない。聴いたのはおそらく最終楽章だけだっただろう。
「いやー、やっぱりすごい演奏だよね。これがライブ録音だなんて信じられないよ!」とS君。
「ライブ録音?」
「そう、演奏会をそのまま録音したもの。しかも東京での演奏会なんだよ」。
演奏会なら、終演後拍手があるものだが、レコードは何事もなく終了したのが不思議だった。
カセットテープにとってもらい、ヘッドホンで繰り返し聴いた。
興味はショスタコーヴィチより
「演奏会なら何かしらの雑音があるのでは?」
という点だった。
良く聴くと楽譜をめくるような音や、第3楽章ではバーンスタインと思われる唸り声が若干聞き取れた。
が、100人近い楽団員、1000人以上の観客がいる空間がこんなに静かな状態なのか?
観客も録音があるからと知っていて、極度に緊張しながら音を立てずに聴いていたのだろうか?
それともマイクの指向性など技術がすごいのだろうか?
といろいろ思いを巡らしながら何度もテープを聴いていた。
という状態だったが、おかげで「いい曲だなぁ」と思うようになった。
まあ、入り口が第5番だったから、というのもよかった。
それ以外の作品はこの時点では全く聴いていないので、ショスタコーヴィチ自体を理解したわけではない。
いろいろ知識が増えるに伴い、ライブ録音とはいっても1回の演奏会を100%収録したケースはまれで、リハーサルも含めてよい部分をつなぐという加工が入ることが分かる。
このディスクも収録日が2日間クレジットされている。
でも、間違いなくライブならではと思われる熱量を感じたこと。
そしてショスタコーヴィチという未知の音楽に触れることでさらにクラシック音楽の魅力にどっぷりつかってしまうことになる、思い出のディスクだ。
かなり後になって公演がテレビ収録されていたことがわかり、見る機会があった。
CD以上にバーンスタインの足踏みが聞こえたり、終演直後に盛大な拍手とブラボーが飛び交っていて燃焼度の高い演奏だったことを実感することになった。
100%演奏会の模様ではなく、加工はあるとはいえ一期一会のライブ録音は、自分にとってみれば、ワクワクするものである。
東京公演の模様